福井地震の教訓から考える|沿岸部・河川敷エリアで必須となる液状化&地盤改良対策

「川の近くだから地盤が心配」「海の近くの土地は地震のときに大丈夫だろうか」
家づくりや土地探しをはじめると、必ず一度は耳にするのが「地盤の強さ」や「液状化(えきじょうか)」という言葉です。しかし、専門用語が多く、パンフレットやハザードマップを見ても「結局、自分の土地にはどんな危険があり、どう備えればいいのか」がピンとこない方も多いのではないでしょうか。
日本の自然災害の歴史を振り返ると、沿岸部や河川敷エリアにおける地盤トラブルの原点ともいえる大災害があります。それが、1948年に発生した「福井地震」です。
福井地震の爪痕とそこから得られた教訓は、現代の私たちが家を建てる際の「液状化対策」や「地盤改良」の重要性を痛烈に教えてくれます。今回は、専門知識がない方でもすっきりと理解できるように、福井地震の事例を交えながら、水辺エリアで後悔しないための地盤対策を下記の項目で分かりやすく解説します。

1.昭和の巨大災害「福井地震」とは何だったのか?
2.そもそも「液状化」とはどうして起きるのか?
3.なぜ「耐震等級3の強い家」でも地盤対策が必要なのか?
4.沿岸部・河川敷エリアで家を建てる前の「2つの下調べ」
5.初心者にも分かる!代表的な「地盤改良工法」の特徴
6.水辺エリアで注目の「最新・液状化対策技術」
7.まとめ:見えない「足元」にお金をかけることが最大の防災

1.昭和の巨大災害「福井地震」とは何だったのか?

福井地震は、終戦からわずか3年後の1948年(昭和23年)6月28日に発生しました。マグニチュードは7.1、最大震度は当時の階級で「震度6」と発表されましたが、被害の凄まじさから、のちに気象庁が「震度7」という階級を新設するきっかけとなった歴史的な内陸直下型地震です。
3,700名を超える死者・行方不明者を出し、倒壊した建物は3万棟以上にのぼりました。この地震がなぜここまで甚大な被害をもたらしたのか。その決定的な要因が、福井平野特有の「軟弱な地盤」と、いたるところで起きた「激しい液状化現象」でした。
福井平野は、九頭竜川(くずりゅうがわ)や足羽川(あすわがわ)などの川が運んできた柔らかな土砂が厚く堆積してできた平野です。地震の強い揺れがこの軟弱な地盤に伝わると、地表付近で揺れが増幅され、想像を絶する破壊力を生み出しました。
さらに、川沿いや水田地帯を中心に、地面から泥水が吹き出し、道路や堤防が裂け、家々が傾いたり地中に沈み込んだりする現象が多発しました。当時の記録写真には、まるで地面が波打ったかのようにひび割れ、原型を留めないほど破壊された堤防や建物の様子が克明に残されています。
この福井地震の教訓は極めてシンプルです。 「地盤の柔らかい場所、とくに水辺に近い土地では、揺れそのものだけでなく『地面そのものが崩れる現象』を想定しなければならない」ということです。

2.そもそも「液状化」とはどうして起きるのか?

ニュースなどでもよく聞く「液状化」ですが、地中で何が起きているのかをイメージできると、対策の理由がぐっと分かりやすくなります。
バケツを使った身近な実験を思い浮かべてみてください。
①バケツの中にサラサラの「砂」を入れ、水をひたひたになるまで注ぎます。
②表面はしっかりした砂浜のように見え、小さなオモチャの家を乗せても倒れません。砂の粒同士がしっかり噛み合って家を支えているからです。
③ここで、バケツの外側を「トントン」と小刻みに叩いて振動を与えます。
④すると、砂の粒同士の噛み合わせが外れ、砂が下に沈み、水が表面に浮き上がってきます。
⑤表面はあっという間にドロドロの泥水になり、上に乗せていたオモチャの家はバランスを崩して傾き、沈んでしまいます。
これが、まさに地震のときに地中で起きる「液状化」のメカニズムです。

液状化が起きる「3つの条件」
液状化は、日本中どこでも起きるわけではありません。以下の3つの条件がそろったときに発生します。
•条件1:砂の地盤であること(粒のそろった細かい砂質の土)
•条件2:地下水位が高いこと(地表近くまで地下水で満たされている)
•条件3:強い地震の揺れが一定時間続くこと
この条件を思い出してください。「川の近く(河川敷周辺)」や「海の近く(沿岸部・埋立地)」は、まさに砂質の土が多く、地下水が浅い場所にあるエリアの代表格です。だからこそ、水辺エリアの土地選びや建築では、液状化への警戒が必須となります。

3.なぜ「耐震等級3の強い家」でも地盤対策が必要なのか?

家づくりを検討している方の多くは、「うちは最高等級の『耐震等級3』にするから大地震が来ても大丈夫」と考えがちです。
もちろん、建物の構造を強くすることは命を守るうえで最も大切です。しかし、どれほど強固なシェルターのような家を建てても、足元の地面が泥水のように溶けてしまえば、建物ごと傾いてしまいます。
建物自体はひび一つ入らず無事だったとしても、家が数度傾いてしまうだけで、人間は平衡感覚を失い、めまいや吐き気を催してまともに生活できなくなります。さらに、傾いた家を持ち上げて元に戻す「沈下修正工事」には、数百万円から場合によっては1,000万円以上の莫大な費用がかかることも珍しくありません。
建物を強くすることと、足元の地盤を強くすることは、車の「シートベルト」と「ブレーキ」のような関係です。どちらか一方だけでは、安全を確保することはできないのです。

4.沿岸部・河川敷エリアで家を建てる前の「2つの下調べ」

もし検討している土地が川や海の近く、あるいは昔の水田や池を埋め立てた場所であるなら、契約や設計の前に必ず行っておくべき下調べがあります。

①ハザードマップと「土地の履歴」を調べる
まずは、自治体が公開している「液状化ハザードマップ」を確認しましょう。危険度が色分けされており、その土地が液状化しやすいエリアかどうかを一目で確認できます。
あわせて確認したいのが「古地図」や「土地の履歴」です。国土地理院のウェブサイトなどでは、昭和初期や明治時代の地図を簡単に見ることができます。 「現在はきれいな住宅街だが、数十年前は川筋だった」「かつては沼地や水田だった」という土地は、土の中にたっぷりと水分を含んでいる可能性が高く、より慎重な調査が必要です。

②地盤調査(SWS試験やボーリング調査)
土地が決まったら、必ず地盤調査を行います。 戸建て住宅で一般的なのは「スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)」と呼ばれる調査ですが、沿岸部や河川敷など液状化が懸念されるエリアでは、土のサンプルを採取して分析できる「ボーリング調査(標準貫入試験)」や「土質試験」を合わせて行うのが理想的です。
地表から何メートルの深さにしっかりとした硬い地層(支持層)があるのか、砂の層はどこにあるのか、地下水はどの深さにあるのかを正確に把握することが、適切な対策への第一歩となります。

5.初心者にも分かる!代表的な「地盤改良工法」の特徴

地盤調査の結果、「地盤が軟弱である」「液状化のリスクがある」と判明した場合に行うのが「地盤改良工事」です。戸建て住宅で採用される主な3つの工法について、メリットと注意点をまとめました。

①表層改良工法(ひょうそうかいりょう)
•どんな工法?:地表から2m前後の浅い部分の土にセメント系固化材を混ぜ合わせ、地面の上に分厚いコンクリートの板をつくるようなイメージで固める工法です。
•メリット:工事期間が短く、費用も比較的安価に抑えられます。
•向いているケース:軟弱地盤が浅い場所にある場合。
•注意点:軟弱層が2m以上深く続いている場合や、地下水位が非常に高い場所には適しません。

②柱状改良工法(ちゅうじょうかいりょう)
•どんな工法?:地中に直径60cmほどの円柱状の穴を掘りながらセメントミルクを流し込み、土と混ぜて「コンクリートの柱」を地中に何十本もつくる工法です。戸建て住宅で最も広く採用されています。
•メリット:地表から2m〜8m程度まで軟弱地盤が続いている場合でも対応できます。
•向いているケース:一般的な住宅地で、ほどよい深さに硬い地盤がある場合。
•注意点:将来家を解体して土地を更地として売却する際、地中のセメント柱を撤去する費用がかかる場合があります。

③鋼管杭工法(こうかんくいこうほう)
•どんな工法?:強度の高い「鋼製の鉄パイプ」を、地中深くにある硬い地盤(支持層)に届くまで直接回転させて打ち込む工法です。
•メリット:10m以上の深い軟弱地盤でも施工可能で、非常に強い支持力を発揮します。工事後の沈下リスクが極めて低くなります。
•向いているケース:河川のすぐ近くや埋立地など、軟弱層が非常に深い場所。
•注意点:セメント系に比べて工事費用が高額になりやすい傾向があります。

④エコジオ工法(砕石地盤改良工法)
•どんな工法?:セメントや鋼管を一切使わず、「天然の砕石(小さく砕いた自然石)」だけを特殊な専用ケーシング(鉄パイプ)を使って締め固め、地中に石の柱をつくる工法です。
•メリット:
 o液状化対策に効果的:石の隙間が水を通すため、地震時の水圧を逃がす効果(ドレーン効果)があり、液状化の発生を大幅に抑えます。
 o土地価値を落とさない:人工物(セメント塊や鉄パイプ)を地中に残さないため、将来の土地売却時に「地中埋設物」扱いにならず、撤去費用の心配がありません。
 o環境と健康に優しい:セメント固化材から発がん性物質(六価クロム)が溶出するリスクがゼロです。
•向いているケース:河川敷や沿岸部など液状化リスクが高い地域、環境配慮や将来の資産価値を重視したい住宅地。
•注意点:一般的な柱状改良工法と比べると、初期費用がやや高めになる場合があります。

6.水辺エリアで注目の「最新・液状化対策技術」

従来の地盤改良は「建物の重さを支えて沈下を防ぐ(支持力を高める)」ことが主目的でした。しかし近年では、福井地震のような激しい液状化そのものを防ぐ技術も住宅向けに進化しています。

砕石パイル工法(天然石を使った水抜き効果)
地中にセメントではなく「天然の砕石(細かく砕いた石)」をぎっしりと詰め込んで石の柱をつくる工法です。 石の柱が建物を支えるだけでなく、地震が起きたときには「地中の水圧を逃がす水抜きパイプ」のような役割を果たします。水圧が逃げることで砂粒の噛み合わせが外れにくくなり、液状化の発生自体を強力に抑制できます。セメントを使用しないため環境に優しく、将来の土地価値を落としにくい点も人気の理由です。

地下水位低下工法・シート工法
敷地の周囲に水を遮断するシートを埋め込んだり、敷地下の地下水をコントロールしたりして、液状化が起きる条件である「水」を取り除く手法です。敷地条件や予算に合わせて、さまざまなアプローチが開発されています。

7.まとめ:見えない「足元」にお金をかけることが最大の防災

昭和の福井地震が残した爪痕は、70年以上が経過した今でも色あせることのない教訓を私たちに与え続けています。
川のせせらぎが心地よい河川敷の近くや、開放感のある沿岸部の暮らしにはたくさんの魅力があります。そうした場所を選ぶこと自体が間違いなのではありません。大切なのは、「水辺には水辺特有の地盤リスクがある」という事実を正しく知ったうえで、適切な対策を施すことです。
•ハザードマップや昔の地図で土地の成り立ちを調べる
•調査を惜しまず、地盤の硬さと地下水の深さを把握する
•地盤の状況に最適な地盤改良工法をプロと一緒に選ぶ
内装のデザインや最新のキッチン設備にお金をかけるのは楽しいものです。しかし、家族の命と大切な資産を長期にわたって守り続けるのは、完成したら見えなくなってしまう「地面の下」です。
福井地震の教訓を胸に、まずは足元の地面に目を向けることから、安心・安全な住まいづくりを始めてみてください。